竹を曲げるスペシャリストとして「八幡丸竹工芸品」に指定される
提灯の弓、お茶の道具から工場で使うピンセットまで。
竹松商店はあらゆる竹の製品を作ってきた、明治20年からつづく竹製品の専門企業です。
近江八幡市では湖岸や里山に数多くの竹林があり、明治以前より竹にまつわる仕事が盛んでした。
今では多くの関連業者が撤退してしまいましたが、竹松商店は今もなお、当時から続く技術を現在に受け継ぎつづけています。
そんな竹松商店は竹の”曲げ“のスペシャリスト。
お皿置きは、丸竹を火であぶり、曲げ、円の形にしています。
曲げる技術、円のつなぎ目が分からない技術が素晴らしく、竹からできていることを忘れてしまいます。
竹松商店の弓張り提灯について
竹松商店の代表的な製品といえば、”弓張り提灯”に使われる弓。
この弓を生産している日本でも数少ない業者の一つなんです。
もちろん、この弓にも得意の竹を曲げる技術が生かされています。
弓張り提灯がどういった製品なのかというと、時代劇の獲り物帳でよく見る、「御用」と書かれているあの提灯。
「御用だ!御用だ!」と叫んでいるシーンでおなじみですね。
提灯を竹の弓で上下に引っぱったもので、現在はお祭りやお盆、お土産が主な需要となっています。
弓の素材はもちろん、昔から変わらず竹。
竹は軽くて提灯にぴったりです。
ですので同じく軽いプラスチックでも代用ができるのでは?と考えてしまいます。
しかし、そんなことはありません。
竹でなければならない理由が、時代が変わっても素材が変わらなかった理由があるのです。
まず第一に、竹は火に強いということ。
提灯の上部からの熱は思いのほか高温で、使っているだけで弓が熱せされます。
プラスチックだとその熱で溶けてしまい、内側にだれて、弓の張りがなくなってしまうんです。
ところが竹であれば、熱をあたえると逆に反りかえり、提灯の張りが強くなります。
そして、竹は加工性が高いということ。
弓張り提灯は、使われるシーンによって形・大きさが異なります。
形は同じなのに弓の幅だけが微妙に違う、といったものまで、姿かたちは多岐にわたります。
そんな多様なかたちを、型の必要なプラスチックで作ろうとすると、少ないロットの需要には対応できないですよね。
竹の加工性が、多品種小ロットの生産を可能としているんです。
ただ、理屈として多様な注文に対応ができるからといって、現実はそう簡単ではないはず。
受注生産で、お客様の要望に応え続けている在りかたには、尊ささえ感じます。
竹製品をつくるまで
これらの竹製品は基本的には全てが手づくり。
一点一点の商品にかけられる労力は、大量生産品に見慣れてしまった私たちでは想像もできないほど。
ですが、かかる労力は何も竹の”加工“だけではないんです。
加工に至るまでの、竹そのものの下準備にも、凄まじい労力が費やされています。
竹の下準備について簡単に説明しますと、
- 10月末~11月頃に1年分の青竹(幹が緑色の、生の竹)を準備。
長さを整えて、1~2カ月の間、屋外で立てかけ、水分を飛ばします。 - 「湯抜き式」と呼ばれる方法で、油抜きをします。
専用の特殊な釜で、竹を丸々煮るのです。
竹の具合、火の具合、湯の沸き具合、全てに神経を使って行う大変な作業。
その後、熱が冷めないうちに表面の油を拭き取ります。
熱いままの竹を、磨きこむかのように拭き続ける、過酷な工程です。 - そしてまた、数か月天日に干します。
この天日に干すという工程、ただ放置していれば良い訳ではありません。
雨が続いて、竹が水分を含んでしまう場合は、都度倉庫に格納します。
気を抜く暇がありません。
こうして、ようやく準備が整うのです。
あくまでも加工前のものが。
次世代の職人たち
代々続く伝統的な企業に、若手の職人がいなくなっているという話はよく聞きますよね。
ところが竹松商店では20代も含む、次世代の若手職人さんが多く在籍されているんです!
京都伝統工芸大学校(TASK)にて竹工芸専攻というコースがあり、その卒業生が多く入社しているからだそう。
若手の職人が育ち安心なのですが、嬉しいことだけではありません。
世代交代、技術の継承が難しいとのこと。
製品が多種多様であるということは、使われる技術も一辺倒ではありません。
そしてそれらの技術は、口伝や、古い資料を元に継承されています。
ベテラン職人さんはいずれは引退しますし、資料は年々風化していきます。
もちろん知識を継承し、資料を書き直ことも簡単ではありませんし、経験を継承することも一朝一夕にはいきません。
またベテラン職人さんが居るという精神的な安心感も大きいもの。
そういった全ての積み重ねを、会社としていかに継承していくか。
大きな課題であると、そうお話しいただきました。
時代に即した展開
竹松商店は、上記のような伝統的な製品だけでなく、現代の一般人の生活にも取り入れることができる製品を
勢力的に作られています。
例えばこの竹の椅子 (スツール)
竹の製品なのですが、カジュアルで、洋間で使ってもなんの違和感もありません。
八幡丸竹工芸品という伝統と、現代のデザインが上手く調和した製品ですね。
実はこの竹の椅子、構造は古来のものから変わっていないんです。
鼓(つづみ)という和楽器を模した伝統的な作りで、鼓椅子(つづみいす)といいます。
この製品を企画した当初、構造は違ったものが検討されていたとのことでしたが
伝統のあるこの形に落ち着いたとのことです。
なお、耐荷重は400kg。
竹は縦の力に強いことと、この構造が合理的だからこその結果ですね。
古来からの技術の懐の深さを感じることができます。
2021年にはクラウドファンディングにて伝統的な竹かごを、現代の住宅でも使いやすいように
アレンジしたものを開発されました。
またワークショップを開催し、一般のかたに竹細工に触れてもらえる機会も増やしています。
“伝統”を飼いごろさず、時代に即してアウトプットし、製品だけでなく経験としてわたしたち一般人にも間口を広げられています。
私たちはその広がっている間口から伝統を垣間見ることはできますが、その礎となった努力はなかなか知ることはできませんでした。
今回私が取材させていただき、見て、感じたことは竹松商店の一部に過ぎませんし、
私も手垢のついたような言葉でしかお伝えすることができません。
記事だけでなく、竹松商店の品に直接触れて、八幡丸竹工芸品という伝統と未来の交わりを感じてもらえればと思います。
竹松商店の製品に触れられる場所
「暦〜こよみ〜 Local Life & Crafts」
滋賀県近江八幡市仲屋町中21 まちや倶楽部内
TEL: 0748-32-4654(代表)
営業時間:平日13:00-17:00(水曜定休)/ 土日祝:10:30-17:00
近江八幡の手仕事による生活用品や雑貨を取り扱っているお店です。
竹松商店の商品は、花台、お菓子置き、プレートスタンド、お箸袋など、ネットでは買えないものを数多く取り扱い中!
贈り物やお土産にどうぞ。
「八幡堀まつり」
近江八幡の町並みや八幡堀に灯りを設置する風光明媚なお祭り。
観光施設等での夜間営業や町家イベント、コンサート、スタンプラリー、マルシェなども実施されます。
竹松商店の提灯を見ることができますよ!
【開催情報】
2022年の開催は終了しました。
会社情報
会社名 | 有限会社竹松商店 |
代表者 | 代表取締役 川端利幸 |
創業 | 明治20年(1887年) |
会社設立 | 昭和34年(1959年) |
営業時間 | 午前8:00~午後5:00 |
休業日 | 日曜・祝日・毎月第2・4土曜日及び盆・正月 |
所在地 | 〒523-0894 滋賀県近江八幡市中村町703 |
電話番号 | 0748-33-3268 |
ホームページ | https://www.tkm.co.jp/ |
SNS | instagram:https://www.instagram.com/takematsu_syoten/ |
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