全く説明になっていないバッグの作り方。シナテルのバッグについてだけは、少し詳しくなれるお話です。

高島帆布とはなにか、そして自社ブランドのトートバッグのご紹介と、
オクルメディアでは帆布関連についての記事をいくつかあげてきました。

今回はバッグについてちょっと専門的なお話。
気になるひとは気になる、興味のない人は見向きもしないであろう、
どうやって鞄ができていくか」について。
とは言えあんまり小難しい話をしても眠たくなるだけですので、ふんわりとしたお話をば。

ちなみにこの記事はあくまでもバッグ作りで大変なことなどをお話しているだけで、
レシピではありませんのでご注意ください!
バッグ作りを始められる方は、本屋さんでレシピブックを買うのをおススメします!

目次

バッグの材料

シナテルのバッグの材料は大きく分けると4つに分かれます。

  • 8号帆布  (バッグ表側の中厚の生地)
  • 11号帆布 (バッグ内側の薄手の生地)
  • 牛ヌメ革  (バッグの底当てや、持ち手)
  • ファスナーホックなどの細々した部品

これらの材料は、一つのお店ですべてを購入することもできるんですよね。
関西であれば大阪に大きな専門商社さんもあって、とっても便利です。
ですが産地、品質、価格などすべてを厳選するため、シナテルはいろんな業者から買い付けています。

生地の裁断

ロータリーカッターで革を切る
ロータリーカッターで革を切る

帆布の生地であれば何十メートルにも巻かれたもの(反:たん)で納品、革であれば半裁(牛を背中で真っ二つに割った片割れ)で納品されますので、それらをパーツごとにカットする必要があります。

バッグのデザインによってパーツの数は異なるんですが、シナテルのトートバッグであれば生地と革をあわせて8パーツほど。
初期のころはもっとパーツ数が多かったんですが、バッグの設計を洗練させ、パーツ数を減らしていきました。
パーツが少ないほうが、縫い目も少なくて、自然な感じの仕上がりになるんですよね。

裁断は専門の業者にて。
生地を何枚もかさねて、コンピューターに設定した図面通りに刃を入れて切ります。
切りあがった生地の数は、毎回バッグ数百個分くらいになるでしょうか。
数百個って多いと思うかもしれませんが、全然そんなことはないんです。
大きなメーカーさんだとかで大量生産する場合、数千個以上の材料を準備していると思います。
そんな少ない数でお仕事を受けてくれる裁断業者さんは足をむけて寝られません。

実は、シナテルが走りたてのころは裁断もすべて自分たちで行っていました。

裁断する枚数は途方もありません。
1つのバッグに8パーツとして、100個のバッグを作るだけで800パーツ。
それを、ロータリーカッターと呼ばれる円盤状の歯がついたカッターで、定規にそって切っていました。

ロータリーカッター
ロータリーカッター

アナログなやり方ですので、生地を切るだけで一日が終わるんですよね。
年じゅう体がバキバキで、常に体のどこかに不調をきたしていました。

ですが、一番しんどかったのはカッターで切る作業よりも、生地の扱いだったように思います。
数十メートルが巻かれた生地ですから、横幅1m強の分厚いバームクーヘンのような重い塊です。
それを御しながら裁断していくことは、本当にしんどかったですね。
何にでも言えることですが、働く環境づくり、これ大切。

縫う準備

生地を切れば、お次は縫製です。
糸は材質、太さなどで様々な種類に分かれますが、シナテルが使っているのは工業用ミシン糸の8号と30号。
レザークラフトでよく見るゴツい糸よりは細いですが、家庭ではなかなか使わない太めの糸です。

上糸(針穴に通すほうの糸)と下糸(ボビンに巻いてつかう糸)をセットして、いざ縫うべし!!
とはいきません。

まず、上糸と下糸の調子(バランス)を合わせてあげないといけません。
ミシンは、簡単に言うと「上糸と下糸の2本の糸で連続した結び目を作る=縫う」という理屈です。
上糸と下糸、この強さのバランスがおかしいと、結び目がイビツになって、うまく縫えません。

この設定は一度行えばいいわけではなく、縫う生地の厚みが変わるたびに行う必要があります。
面倒くさいですが、綺麗に縫うためにはとっても大切です。

中布を縫う

シナテルのバッグは、外側で1つの袋、内側で1つの袋を作り、それを組み合わせた2重構造。
外と内が独立しているので、どちらから作るという順序はありません。

内側にはいくつかのオープンポケットと、ファスナー付きのポケットが1つあります。
構造上パーツも多くて手間がかかるので、最初に内側の袋から取りかかることが多いですかね。
後述する外側の袋の4倍ほどは時間がかかります。

パーツが多いということは、縫製する箇所も多くなるからです。
確かに大変なのですが、私は同じ作業の繰り返しができないので、集中力を保つことのほうが大変かもしれません。

平面の状態でポケットを作って、それを立体の袋状にしていきます。

内側の袋
内側の袋

外布を縫う

外側の袋は、工程も少なく比較的スムーズに作業が進みます。
ただ確かに工程は少ないんですが、内側の袋と明らかに異なる生地の厚み。これがやっかいなのです。

シナテルは外側につかう生地の片面に樹脂のフィルム加工をしています(ラミネート加工のようなもの)
この加工をすることで、生地がより強固になって、水の侵入を抑制するという効果があります。
が、固くなるんです。
何枚もかさなると、間違いなく家庭用ミシンでは縫えません。

工業用のミシンであれば比較的スムーズですので、これも袋状になるように縫っていきます。

縫い合わせ

工業用ミシン (腕ミシン)
工業用ミシン (腕ミシン)

外側の袋を外表、内側の袋を中表にしてかさね合わせ、360度をぐるりと縫って一つの袋にします。
生地が最も密集する工程で、最大で8枚の生地が重なります。
前述のラミネートされた生地が8枚なので、その硬さはもはや凶器の部類です。
初期のころは、工業用ミシンよりパワーの少ない職業用ミシンで縫っていたため、針が折れることも度々ありました。

ミシンの種類と特徴

工業用ミシン=パワー◎
職業用ミシン=パワー〇
家庭用ミシン=パワー△

針が折れると、絶対に折れた針が見つかるまで作業を再開できないんです。
検針機(金属探知機)を使って探し回ったこともありました。

何十万もする工業用ミシン (上の画像の腕ミシン) を導入しましたが、ほぼこの工程のために買ったといっても過言じゃないですね。

また、この360度の縫い目はトートバッグの縫い目で最も目立つものです。
この縫い目の出来が、バッグ全体のクオリティを左右するほど。

この縫い目をバシッとキメて、360度を縫いきれば、バッグ本体の完成です!

革持ち手を磨く

シナテルのトートバッグの持ち手は本革です。
革は持ち手や底当てくらいの使用で量がいらないので、一度に革を買ったとしても牛1~2頭分くらい。

柔らかいお腹の部分を薄く漉いて、底当てなどのパーツに。
固い背中の部分を持ち手に使います。

[革漉き(すき)]
革を薄く加工すること。革の裏側(床面)を削る。

革漉きは業者さんがやってくれて、薄くなった状態で納品されます。
その革を、短冊状に切って持ち手にしたり、各種革パーツの型に抜いたりしてつかうんです。

ザクザク切りたいところですが、何せ生き物の革です。
傷があったり、血管の跡があったり、シワがあったりと色んな特徴があります。
人間だって生きていれば良く動かす部位の皮膚に癖がついていたりしますからね。
そういった革の表情こそが天然素材の良さではあるんですが、なかには使えない箇所もあったりで。
そこをうまく避けながら、無駄が出にくいようにカットするのは気を使います。

うまく切り出せたら、次は革を磨く工程へ。

黒い革の持ち手は、革とナイロンベルトを縫い合わせています。
黒の様に色の濃い革は、濡れたままで使っていると衣服に色移りする可能性があるので、
体に接触する面にナイロンのベルトを縫いつけているんです。

かわって茶色い持ち手は一枚革。
まず、トコノールと呼ばれるネバネバのものを使って、コバ(革の側面)を磨きます。
原液だとネバネバすぎるので、水に混ぜて。
(私の場合はかなりシャバシャバにします)

やすりで削って、トコノールを塗って、乾かして、布で磨いて・・・
これを3セットほど繰り返します。
すると、凹凸がなくなりツルツルとして丸みを帯びたコバのできあがり!

実は私は革を扱いはじめた時に、革教室に通っていました。
ですが当時に学んだことはほぼ実行していなくて、革の基礎的な扱いかただけを継承しています。
先生ごめんなさい。

というのも、革の扱いに正解はないからなんです。
例えば革を水だけで磨く人もいますからね。
セオリーはありますが、職人の数だけやり方が存在するくらい、奥は深いんです。
やっていくなかで、自分のスタイルが身についていきます。

ですので、やり方を聞いても教えて貰えない、ということはザラですよ!

上:未加工 下:磨いた革
上:未加工 下:磨いた革

完成!

持ち手をカシめる前
持ち手をカシめる前

これで、バッグの本体と持ち手の準備が終わりました。
あとはこのパーツをカシメて、トートバッグの完成です!

かなりざっくりとした説明でしたが、バッグ作りについて少しでも知って頂けたなら嬉しいです。
やってみれば意外とできるものなので、興味のあるかたはぜひ新しい扉を開いてみてください!

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この記事を書いた人

KUBOのアバター KUBO バイヤー/メディア担当

OQRU STOREのバイヤー兼、メディア担当兼、バッグ職人。
2022年8月から入社したフレッシュな新入社員(おじさん)
使うと味のでるものや、妙に細かいところをこだわった商品が好き。
欲しいものはだいたい高い。

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